「苗字が変わりました」

職場の先輩が結婚をしたらしい。

おばさんたちの風のうわさで、彼女がいることも知っていたし、30過ぎた先輩だったので、おお、タイミングか。とも思った。

わたしが結婚について話し始めるとだいたい友人たちはそろいもそろって「また始まったよ」という顔をする。今回はそういう話じゃないので安心してほしい。

 

「新社会人さん、私事で大変恐縮なんですけれど、入籍を致しまして」

「おめでとうございます!」

「苗字が変わりました」

「ん?!」

 

驚いた自分に驚いた。これだけ多様性とか、夫婦別性とか、男女平等とか、色々なことに口を出しておいて、一瞬でも、先輩(男)の苗字が変わることに違和感を覚えたのだ。

何よりも自分の見えない偏見に一番驚いたのだ。

夫婦別性も、何もかもそれぞれ当人たちの問題だ。

当人同士で決めたことであって、他人が口出しすることでも、ジャッジすることでも全くないのに、驚いてしまった自分に驚いている。

きっとわたしは気づかないうちにもっとたくさんのものに対しての偏見を持っていて、偏った見方で生きている。

それは、どんなに勉強しても、どんな生活を送ってきたかで人それぞれ違うのだから、仕方のないことなのだとおもう。

ただ、自分は偏見があるということを理解し、生きていくことはできる。

気づけてよかった。

次男の人の苗字が変わっても、きっとわたしは驚かずに、心の底から祝福できるはずだ。