恋が始まるのはいつだって
仕事に化粧はあまりしていかない主義だ。
仕事で主に相手とする人が高齢者や障害者、子供、低所得者などということもあって、何よりもとっつきやすさを一番に考えた結果、あまり化粧っけはない方がいいというのがわたしの持論だ。
もちろん、化粧っけがあってかわいくてとっつきやすいのが一番なんだろうけど、そんな難しいことはわたしにはできないし、何よりも朝早起きができない。
眉毛を書いて、日焼け止めを塗り、前髪と少しばかりはねている髪の毛を内巻きにするか無造作にまとめて家を出る。
異性に見られるという意識は基本的にない。
合コンや街コンに行くときだったり、友人と出かける時なら、30分くらいかけて丁寧に化粧をして、ヘアアレンジもしっかり時間をかけて、ファッションショーをしていくが、そういうこともしない。
職場恋愛や、職場内の出入り業者との恋なんて夢のまた夢だ。
そんな今日、まさに出入り業者の下請け会社のお兄さんがかっこよすぎて危うく恋に落ちるところだった。基本的にいろんな人がかっこよくて好みだとは騒いではいるが、現実に好きになる顔面のタイプは学生の頃から決まっている。
ちょっと惜しいぽっちゃりのヤンキー顔が好きなのだ。漏れなく眉毛はない。
ヤンキーっぽいのに少しコミュ障っぽいところもとてもどタイプだ。名札はしっかり確認したし、左手の薬指もちゃっかり見ていた。
それでも、今日は眉毛を描いただけだし、こんなにブスな日にわざわざ出会わなくても...とも思うけど、神様もご先祖様もお稲荷様も運命の人に出会う日を事前に教えてはくれない。
だから毎日ちゃんとしてようなって話なんだけど、たぶん明日もわたしは家を出るギリギリまで布団から出られない。